社会福祉法人 ハスの実の家

理事長あいさつ

仲間と一緒に ーハスの実らしさの追求ー

  理事長 櫻井康宏(福井大学名誉教授)

 去る五月二七日日の理事会の場で新理事長に就任することとなりました。重い責任をひしひしと感じつつも、皆さんと一緒に新たな可能性を切り開いていきたいと考えております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 福井大学を定年となる二〇一二年三月を前に、福井の地を離れて愛知に戻ることを想定しながら、私自身が「ハスの実」から学んだことを若い後継者の皆さんにお伝えすべく、本紙に『手渡したいこと』を十二回シリーズで書かせていただきました。多分に一方通行的で分かりにくい内容であったのではないかと反省しております。反省の一環として、少し昔を振り返ってみます。

1.障害者とまちづくり

 ほぼ四十年前の一九七三年の五月五日、全国でも先駆的な「障害者と街づくり研究集会」が福井大学で開催されました。藤本文朗先生のご指導を受けて、私も福井市内での「バリアフリー」点検活動を踏まえて特別講演をさせていただきました。これが障害者問題との最初の出会いでした。

 その当時、行政用語である「都市計画」に対して「街づくり」や「町づくり」という用語が使われ始めた背景には、行政計画に対するさまざまな反対運動を契機とする「住民参加」への要求があり、その後さらに平仮名で「まちづくり」という用語に統一されてきた背景には、「行政が作る計画への参加」ではなく「住民主体の計画づくり」への強い思いがありました。

 また、障害者による「まちづくり」の運動を、その当初から私たちが『障害者のまちづくり』ではなく『障害者とまちづくり』と呼んできたのにも一定の思いがありました。それは、当時の『障害者のまちづくり』がややもすると「バリアフリー化」のみに矮小化される(障害者の参加が計画終盤での付け足し的な「バリアフリー化」にのみ限定される)傾向がみられたことに対して、計画内容の骨格が決まる初期段階からもっと広く深く障害者の参加を実現すべきこと、言い換えれば、「障害者のため=for」でも「障害者による=of」でもなく、あらゆる分野の計画の構想段階から常に「障害者と一緒に=with」という思いを込めたものでした。

2.ハスの実らしさ

 この「障害者と一緒に=with」という発想は、障害をもつ人々を「仲間」と呼ぶ発想と共通のものであり、「仲間の願いを第一に」という「ハスの実らしさ」の真髄でもあると考えています。その「ハスの実」と私との関わりは一九八〇年代半ばからであり、法人化に向けた「施設づくり」に一緒に取り組む中で、「ハスの実らしさ」を生み育てた大きな条件が、①小規模(家庭的)であることと、②地域の中にある(地域と共にある)ことの二点にあることを実感していました。

 しかしその後、いまだに貧しい日本の制度の下での法人化は、この二つの条件を豊かに引き継ぎ発展させることを困難にしているばかりでなく、二〇〇三年の支援費制度以降の「市場主義」の激化は、「らしさ」の真髄である「仲間」と呼ぶ発想すらも遠ざけつつあるかのように思われます。こうした困難に直面しながら、「ハスの実」は創立五〇周年を迎えます。過去五〇年を振り返りつつ、今後五〇年の「らしさ」をどう展望するか、それが問われています。

 大変に難しい課題ですが、日本の障害者問題研究が導き出してきた「発達保障」の理論の中にそれを解き明かす鍵があると考えています。中でも、個人・集団・社会という三つの「発達の系」のうちの「集団」の役割と位置づけを、皆さんと一緒に再構築していくことが喫緊の課題だと考えています。